先人が築き上げた文明を継承・発展させ持続可能な未来を実現するために、これからの人文社会学には大きな期待が寄せられています。ICRでは、基盤研究としてデジタル・ヒューマニティーズ(人文情報学)を推進し、学術資料のデジタルアーカイブ化、オープンアクセス化、情報共有のための技術開発、研究手法や研究評価基準の統一化をはかるとともに、それらを利用した個々の学際的研究を発展させることで、人文社会学の価値を再創造することを目指しています。たとえば、西アジア文明研究においては、定住・農耕の開始から文字・宗教・都市・国家の出現と発達に至るまで、文明社会の歴史プロセスを人類史的視野から探求し、現代社会が抱える諸問題の解を歴史の中に読み解くグローバルな研究拠点を形成することが期待されています。インド学・仏教学・チベット学研究の分野では、専ら書写文化を対象とし、人類によって書き記されてきた思索の跡を辿りながら哲学、思想、倫理、宗教を歴史的視点から解明します。石、植物、紙という物質的媒体を通して今日に継承された膨大な文字情報を読み解き、その資料を新しい情報学ツールを用いながら持続可能な形でさらに継承していくために、ハンブルク大学アジア・アフリカ研究所などの研究機関との国際連携を軸に、文献実証的な研究をすすめています。